東京都隣県の郊外。第一種低層住居専用地域。三方を隣地に囲まれ、東西に伸びた長方形。土地の起伏はほぼ無い。’70~’80年代に多く産み出された典型的な低コスト2階建木賃アパートが取り壊され、更地の状態である。戸建用として三分割くらいにできる敷地の広さだが、長方形の短手側が接道面になっていて道からの奥行がある為、旗竿地にして切売りするには無駄が多く、一つの敷地に共同住居を建てた方が有意義な土地形状である。賃貸住宅と終の住処は一見相反するけれど、案外と相性が良いのでは?という問いから、時と共に風景を織りなしてゆく様な賃貸住宅を計画した。限られた土地の中で、共同住居である事を感じさせない奥行のある眺望を確保する為、敷地に対して45°傾いた平面計画とし、1階からも2階からも居間からデッキを通して同じ様に庭の植栽を臨む事が出来る。生活空間は必要最小限ではなく、必要なものは少しゆとりを持って設え、その代わり日常生活に登場する頻度の少ない客間は共有にした。個々の駐車場は設けず、来客用の駐車スペースを一つ、南西の角に共有の畑。老人の為の万能な住まいではないが、健康なままで寿命を迎える人も沢山いる。そうした人たちでもゆっくりと暮せる(借り)住まい。長期賃貸は空室率の面からも補修費用の面からも大いに有意義である。そして、長く愛せる安心感と生活の豊かさが、ずっと健康でいようと思わせ続ける更なる活力になるはずだ。