心地良い生活という登山口からS設計室は登り始めます。

敷地をよく観察し、そっと建物を配置する。風通しが良く、陽の光と陰影によって室内に奥行きをもたらす窓。食卓と台所からの景色、長く過ごす場所からの風景を大切に。構造的にも心理的にも安心感を与えてくれる適当な量の壁。日本の気候風土に合う、深く軒の出た勾配屋根。よく触れる所には自然素材。必要十分な設備機器。生活様式に寄り添った家具寸法。庭には樹を。
当たり前の事を当たり前のように、5合目まではスイスイと。
そこから先は建主さん次第。見晴らしが良く満足の地点まで登れたら、頂上まで行かない事もあります。それでも良い景色を求めて登る山の天辺には「時間と共に育まれる美しさ」があって欲しいなと願いながら。

設計の実務を始める前から、隣にはいつも様々な藝術の分野の人たちがいました。建築は人の係り方やお金の事など、その成り立ち方が美術作品とは随分と違います。良いお隣さん、くらい。
登り口は違えど同じ山に登っているのだと思っていたら、友人が言いました。「違う山を登っていて、お互い頂上で「おーい」って言うんじゃないの?」

まあそれでもいいや、山は沢山あるんだし。